樂府詩集




樂府詩集

『楽府詩集』(がふししゅう)は、北宋の郭茂倩(かくもせん)による楽府集。
古代から五代までの楽府5290首を分類して網羅的に集めたもの。全100巻。

概要
郭茂倩は太常博士の郭源明(1022年-1076年)の長男だった。郭源明の父の郭勧については宋史に伝がある。『楽府詩集』のほかに『雑体詩集』という著書があったが、失われて今は伝わらない。『楽府詩集』は北宋末までに編纂された[3]。
先行する歌謡集には『玉台新詠』があり、また『宋書』楽志や『芸文類聚』などの類書にも楽府を収めるが、『楽府詩集』は楽府と考えられる古今の作品ほとんどすべてを収集し、曲によって分類した点に特徴がある。
郭茂倩の時代には楽府の音楽は伝わっていなかったが、歌辞の由来については(漢)蔡?『琴操』、(晋)崔豹『古今注』、(唐)呉兢『楽府解題』、(宋)沈建『楽府広題』などを、演奏については(南朝宋)張永『元嘉正声技録』、(南朝宋)王僧虔『大明三年宴楽技録』、(陳)釈智匠『古今楽録』などを引用して述べている。これらの書物の多くは失われているので、『楽府詩集』は貴重な資料にもなっている。中津濱渉によると『楽府詩集』は160種にのぼる書籍を引用している。とくに重んじているのは釈智匠『古今楽録』、呉兢『楽府解題』、沈建『楽府広題』の3書である。
構成
『楽府詩集』では楽府を12門に大別し、その中をさらに細分している。
"郊廟歌辞(巻1-12)
"燕射歌辞(巻13-15)
"鼓吹曲辞(巻16-20)
"横吹曲辞(巻21-25)
"相和歌辞(巻26-43)
"清商曲辞(巻44-51)
"舞曲歌辞(巻52-56)
"琴曲歌辞(巻57-60)
"雑曲歌辞(巻61-78)
"近代曲辞(巻79-82)
"雑歌謡辞(巻83-89)
"新楽府辞(巻90-100)
このうち郊廟歌と燕射歌は宮中の雅楽である。鼓吹曲から雑曲歌までは呉兢『楽府解題』の分類に(多少変更の上)基本的に従っている。近代曲とは隋・唐時代に発生した楽府の総称である。
収録作品
収録した作品は5290首にのぼり、このうち作者不明のものが1497首、作者の明らかなものは576人による3793首を収録する。作者の明らかな作品の時代ごとの内訳は以下のようになっている。
時代漢以前漢


蜀晋




作者数221611111529177334
作品数3321124121210227171546218
時代北魏
北斉
北周


五代
作者数3362930610
作品数7711378199629
すなわち隋以降の作品が345人2103首にのぼり、後の時代に作られた楽府集が隋唐の作品を収録しないのと大きく異なる。また、このことが『楽府詩集』の巻数が多くなる原因ともなっている。南北朝まででは梁のものが突出して多い。
作者別では、南北朝まででは沈約の119首がもっとも多く、ついで?信、傅玄、鮑照、梁の簡文帝の順に並ぶ。隋以降では李白159首、白居易98首をはじめとして、劉禹錫、温庭?、張籍の順に多い。